穏やかな午後、あたたかな光が差し込む食卓に、ふと目に入る愛らしいうつわ。何気ない日常のひとときが、ふんわりとやわらかく彩られていく...。石川久美子さんは作家名「studio claynote」として北海道函館市で、そんな心にぬくもりを届けてくれるような作品を制作されています。

「なにか趣味を持ってみよう」という軽やかな一歩から陶芸を始めたという石川さん。そこから少しずつ、土との対話が日々の楽しみとなり、今のかたちへと育まれていきました。
「日常の中でそっと寄り添うような存在であれたら」そんな想いを胸に、器はもちろんのこと、粘土で形づくれるものであればなんでもと、自由な発想で多彩なアイテムを生み出しています。
益子陶器市でも活躍されている石川さん。見ているだけでも楽しくなるような展示スペースは気が付くと自然と笑顔がこぼれてしまいます。

ろくろや板づくり技法でひとつひとつのかたちを丁寧に整え、筆を使って絵の具と釉薬で彩りを添える。さらにその上からやさしく釉薬を重ねる…。手間と時間を惜しまず注がれた工程からは、手しごとのあたたかさが感じられます。

作風の随所には、北欧やドイツの洗練されたデザインや、時を経た古いものが持つ深い味わい、さらには建築やテキスタイル、映画や音楽といった多彩なアートのエッセンスが散りばめられています。眺めるたびに新たな魅力を発見できる、奥行きのある表現と世界観が、作品に静かな輝きを添えています。

手に取ったときの指先に伝わるなめらかさと、素朴で存在感のある質感。つるり、ざらりと移り変わるテクスチャーの表情は、まるで土と対話しているような心地よさです。

毎日の中に、ふっと心がやわらぐ瞬間をくれる存在。そばにあるだけでなんだか嬉しくなるようなどこか懐かしくて、そして何よりもやさしい。いつもの食事がほんの少し特別になる、そんな力を秘めたうつわです。
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