
ふわふわとしたもの、愛らしいものに触れたとき、無意識に頬がゆるみ指先は自然とその輪郭を追いはじめる。凹凸をなぞりながら、そこに潜む何かを集めるような感覚...昔からオオヤさんはそんな瞬間が、今も変わらず好きだと言います。
「器は、使われてこそ完成するもの。だからこそ、ぷっくりとした立体感や、思わず撫でたくなる質感にこだわっています。見る、触る、飾る。そのすべての行為をやさしく包み込む存在でありたいんです。」

陶芸という表現に惹かれた理由は、「予測できない楽しさ」にあると教えてくれました。最終工程である焼成では、1,230度を超える窯の中で、色も形も作り手の想像を離れて変化していきます。計画通りにいかないこと。思いがけない表情に出会うこと。その偶然性こそが、陶芸の最大の魅力。そして最後はどこか神頼みになる...そんなおおらかさが、他の素材にはない自由さとなって、制作の背中をそっと押してくれるのだそうです。
代表的なシリーズのテーマは、ふっくらとした蕾に秘められた色やかたち、そして香りの気配。花がひらく直前の胸が高鳴るあの一瞬の「予感」を、器の中に閉じ込めたい。そんな想いから、チューリップシリーズは生まれました。

フォルムやモチーフの源にあるのは、自然が描く曲線。人工的な直線ではなく、わずかに揺らぎを残したライン。植物の葉や蕾のように、流れるようで不均一なかたちを観察しながら、心地よい輪郭を探していきます。


色は毎回その場で混ぜ合わせられたものなので、偶然の重なり方ひとつで表情は変わり、同じものは二つとありません。その違いを個性として愛でてもらえるように...あえて余白を残した仕上がりを大切にしています。

これまで器を中心に制作を重ねてきたオオヤさんですが、現在はティーセットやケーキプレートの構想もあたためているところだそうです。自宅で過ごすティータイムが、より豊かで少し特別な時間になるように…。暮らしの中にそっと花を添える存在を、これからも生み出していかれることでしょう。
手に取った瞬間に、指先から静かに伝わる温度と気配。その器が並ぶことで、いつもの時間が少しだけゆっくりと流れはじめる。オオヤサイリさんのうつわは、そんな小さな変化を、確かに暮らしの中にもたらしてくれそうです。
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