岐阜県土岐市で精炻器(せいせっき)という器を作陶されている安達あかねさん。当店でお取り扱いさせていただくことになりました!土岐市の工房にお邪魔しお話をお伺いいたしました。
偶然目にした安達さんの作品を拝見して、精炻器(せいせっき)という存在を知った店主。アンティークのような感じがするアールデコ調の装飾。「これは、ヨーロッパの器かしら?なんて素敵なの!」とテンションが上がったのを覚えています。それと同時にどこか昭和レトロのような懐かしい雰囲気...そんな印象でした。
精炻器(せいせっき)は美濃地方で大量にとれる未利用の黄土をどうにか活用できないかと考えたのが始まりです。その当時磁器は白色の土が良いとされ、色のついた土は雑器や工業的に使われるものでした。磁器のようにきめ細かい美濃の黄土に、白い化粧土をかけ装飾を重ねて作る優雅な焼き物として、昭和初期に技術が確立されます。地元の窯元で生産されるようになりますが、昭和40年頃には大量生産の波に押され、だんだんと技術や手間がかかる精炻器の担い手はいなくなっていきます。そして約30年のブランクの後、手づくりの良さが見直されるようになり、再び生産を復活させようという流れが生まれました。作り手の安達あかねさんは、精炻器の技術を活かしながら、何気ない日常のフワリと心に寄り添うようなうつわ作りを目指され、また技術の継承も行っています。
千葉県のご出身の安達さんは大学で美術学科を卒業後、岐阜県多治見市意匠研究所で陶芸を学ばれます。
「陶芸に行きついたのは、小さな頃から''何かを作る人''になりたかったからだと思います。あとは色々な出会いとタイミングですね。自分の中のアンテナが何かに反応して自然と道が決まってきたかなと思います」と安達さん。お話しているとこちらも明るくなるようなお人柄です。
精炻器との出会いはちょうど意匠研究所を卒業するタイミングで誘われた「精炻器研究会」に参加したことだったそうです。「精炻器研究会」は2000年に発足され、精炻器の加飾技術の継承や発展、普及活動などを目的として発足された会。安達さんは精炻器独自の土の色味と化粧土による加飾の技法に魅せられ今に至ります。
精炻器の特徴である加飾。白化粧を施した後、「刷毛打ち」「櫛目」「指描き」などの手法で装飾していきます。
こちらは「指掻(ゆびかき)」の様子。
化粧土を指で掻いているから指掻文といいます。
指先に化粧土をつけて描く「指描(ゆびがき)」
''指掻''と同じ言い方ですが、''掻く''と''描く''で異なる書き方になります。
アールデコ調のレトロな絵付けがとってもエレガント!
柚子肌釉(柚子の表面のようになる)を使用しているため、淡くやさしい色合いに。
こちらはDEW(しずく)シリーズ。
ゴムスポイトのような道具を使い描いていくイッチン技法は、本来は化粧土で線描きし使用することを目的とすることが多いそうですが、安達さんはあえて濃いめの泥を使い、絞り出したときの最初の一粒の可愛らしさに着目。何か図案として使えないかと考えたのが始まりだそうです。交互の方向から絞り出され連なる粒が雫(DEW)のようで、不思議な様子が魅力的な作品です。
実は作家活動をしながら''圧力鋳込み屋さん''もされている安達さん。
※圧力鋳込み = 土(泥しょう)を空気の圧力で型に注入する方法
「70才でまだ若手と言われる世界なので、言わずともまだまだ自分は修行中の身です。鋳込みは土づくりがすべてといっても過言でないくらい一番大切です。」
土づくりから石膏型と機械を使いカタチを形成する職人さんとしても日々器と向き合ってます。
「土岐市は美濃焼の産地でもあり分業で成り立っています。土、釉、鋳込み、窯、絵付け...などなど本業の人がいっぱいいるので、分からないことがあると すぐ聞ける環境なのが本当ありがたいですね。」と安達さん。
精炻器は雑器に属しているので、なるべく均一に制作されるので使いやすいものに。その中で使う人の経験とか思い出の何かに触れられる懐かしい感じものを作りたいそうです。何気ない日常の中でふと気が付くとそこにあって、フワリと心に寄り添うような、そんなうつわ作りを目指して。これからも素敵な作品を楽しみにしてますね!
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