小代焼(しょうだいやき)は、熊本県の北部、荒尾市・玉名市・南関町など小岱山(しょうだいさん)の周辺で作られてきた焼き物です。その歴史は古く、慶長(安土桃山時代)からといわれ約400年以上の歴史があります。2003年には国の伝統的工芸品として指定されています。
当店で取り扱いさせていただくことになった小代焼の作り手である、小代本谷ちひろ窯さんは、熊本県内に11軒ある小代焼の窯元の中の一つです。熊本県荒尾市の工房にお邪魔させていただきお話をお聞きしました。
熊本県荒尾生まれ、福岡県大牟田育ちの前野智博さんが1998年に築窯したちひろ窯。28歳まで会社勤めをしていた前野さんでしたが、焼き物の産地だったこともあり、作家さんとも話す機会があったことからご自身も作り手の道を歩まれることとなります。小代瑞穂窯で修行をした後、沖縄の読谷山窯で技術を習得されます。
大交易時代から、中国、韓国、ベトナムなどの周辺諸国の影響を受け独自に発展してきた琉球の焼き物文化。多様な焼き物の技術が豊富で色々と学ぶことができたそうです。そしてもう一つ、読谷山焼共同売店で働いていた奥様との素敵な出会いも。沖縄出身の底抜けに明るい奥様と最近では息子さんもご一緒にちひろ窯を営んでいます。
沖縄の守り神も日々手仕事の営みを見守ってくれています。
小代焼は小岱山の麓で取れる小代粘土を用います。鉄分を多く含み小石粒が多い土であることから、高温で焼成できるそう。磁器と同じような焼き方になるため、陶器としては比較的硬い焼き物なのだそうです。
「農家さんからワラを分けてもらって、釉薬の藁白釉(わらじろゆう)を作ったり、なるべく昔ながらの方法を守りながら作陶しています。」と前野さん。
小代焼の特徴の一つでもある釉薬。藁灰・木灰・長石などを釉薬として用いることにより乳濁や結晶が表情豊かなうつわが生まれます。色により、青小代、黄小代、白小代と呼ばれています。
ちひろ窯さんのスタンダードな色は落ち着きのある生成り色です。クラシックな雰囲気にどこか懐かしさを感じます。
小代焼の代表的な技法の「流し掛け」。下地の生地に釉薬をかけ、さらに上から釉薬をかける「二重掛け」によって、二つの釉薬のかかり具合や窯の温度などでその時々でしか生まれない自然が創り出す美しさに魅入ってしまいます。
小代焼は基本的に還元焼成で焼かれます。窯の中を酸欠にして焼く方法で、窯変(窯の中での作品に変化)が出やすい焼き方です。同じ土や釉薬を使っても還元のかかり具合や窯内での置く位置、温度で色合いが変化します。すべての焼き物に言えることではありますが、窯に入れたらもはや人間の手を離れたものになる...。神秘的なものを感じざるを得ません。そう思うと本当に作品は一期一会です。
ちなみに、窯は前野さんの手づくり。
前職の会社員時代のお仕事が窯関係だったそうで、構造が分かっていたので作ったとのだそう。(と、さらっとおっしゃいましたが...凄いですよね。)
沖縄で学んだ作風や技術を用いながら、本来の小代焼より少し白や明るめのお色を意識したりなど、小代焼の伝統を守りながら現代にもあうようなスタイルを模索し制作されています。なによりも使い手に愛されるようなうつわを目指して。
「展示会をする機会があって、下の名前の智博(ともひろ)の読み方を変えて仮で''ちひろ窯''とつけて、そのまま今でも使うようになったんです。」優し気な智博さんととても明るい奥様。お二人のほのぼのした雰囲気にこちら心があたたかく、ホンワカしてしまいました。
この度はお忙しいところお邪魔させていただいてありがとうございます!
今後とも素敵な作品楽しみにしております。
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