新しくお取り扱いを始めさせていただいた栃木の作家 笠原良子さん。
素敵な工房にお邪魔しお話しを伺いました。
美術系の高校を出られたあと、日本大学芸術学部で油絵を専攻。アカデミックや技術的なことも含め、絵画について学ばれた笠原さん。
「先生になるつもりはなかったのですが、教員免許が取得出来るということで取っておこうかなと。その課程で陶芸を学ぶ機会あり、それがとにかく本当に楽しかったんです。」と、当時のことを思い出されたように、楽しそうにお話くださいました。西洋絵画を学ばれていたということをお聞きすると、笠原さんの作品が優雅な雰囲気をまとっているのはそのせいかもなと思いました。
卒業後、益子の栃木県立窯業指導所伝習科でろくろの技術を習得。その後、人間国宝の故 島岡達三氏に師事。2006年に独立されます。今から7年前に益子の隣町、市貝町に現在の工房を建てられました。
「自分のわがままをそのまま大工さんに伝えて建ててもらいました。」とおっしゃるとおり、随所に笠原さんのこだわりが感じられる本当に素敵な工房です。
作陶作業がしやすそうなとても気持ちの良い空間で、笠原さんのセンスの良さが反映されています。自然の光がやさしく入り込み、景色が美しい絵画のように見える窓。ちょうどこの日は見事な紅葉を楽しませていただきました。
窯はガス窯を使用。こちらの場所も優しい光が部屋全体を包み、窓からは壮大な景色が。
工房には欅(けやき)製の蹴ろくろ(けろくろ)と電動ろくろの2台。
とても立派で美しい蹴ろくろです。
輪花皿以外は、ほぼろくろで作られるとのこと。
こちらの茶壺も各部分をろくろで作成。笠原さんの作品の特徴である美しい曲線と取っ手部分の柔らかなふくらみ。思わず「はあ~」とため息が出てしまう麗しさです。
制作には益子の土と伝統の釉薬を使用。「先生が益子の土と釉薬で作られてて。自分の作品を作っても違和感を感じなかったのでそのまま使ってます。耐熱ものの土以外は益子の土となります。」と笠原さん。
益子の特徴である少し厚みのある風合いと伝統的な重厚さ。それでいて現代的な機能性もあり、繊細な個性ある作品。笠原さんが作陶される上で重要な要素となっていると感じます。益子の伝統的な釉薬である地釉(じぐすり)、白釉、飴釉、並白釉(なみじろゆう)など。これらを使い笠原さん独自の色を作っていきます。
お邪魔させていただいた際にも、素敵な茶壺と茶杯で中国茶をいれて頂きました。昨年は数人の益子の作家さんと香港にお仕事で行き、陶芸のデモンストレーションなどをなさったそうです。子供のように瞳をキラキラと輝せてお話くださいました。
現代の生活に寄り添った、やさしく気持ちが豊かになるような想いが込められ作られている品々。お料理上手な笠原さんだからこそ、細かな点に気がつかれ、制作にも反映されているのが分かります。
※耐熱の土は益子以外の耐熱専用の土を使用。
土鍋の表面をよく見ると肉眼でも細かい孔を見ることができます。使い始める前にはこのすき間を埋めるため、おかゆを炊いてくださいとのこと。こんなひと手間かかるのも、自分の土鍋になっていくようで嬉しいですね。使用しているとお鍋にヒビが入ることがあるそうですが、このヒビは決して壊れたわけではなく、土鍋を直火にかけたことによる膨張の調整によるもの。使用には全く支障はないのでご心配なく。
耐熱土は通常の食器に使う土と比べて焼成も低く柔らかいので、少し丁寧にやさしく可愛がっていただくと、長く愛用することができます。また、使い込むほどより味わい深くなるお品です。
一緒に年月を重ね、経年変化を愉しむ。
ますます魅力的になるのを眺めるのも楽しみですね。
笠原さんには素敵な工房にお邪魔させていただき、またお忙しいところご丁寧に色々と教えていただいてありがとうございます。とても楽しい時間でした。これからも作品楽しみにしてます!
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