澄んだ夜空や厳かな深海を思わせる瑠璃色や夕暮れのように上品な飴色。ルリアメ工房さんの作品は、どこか懐かしさを感じます。思わずため息の出る釉(うわぐすり)の美しさが素敵なお品ばかり。工房のお名前の「ルリアメ工房」は陶芸家の酒井薫さんが大好きな瑠璃釉と飴釉からとったお名前とのこと。
福島の須賀川の工房にお邪魔し、お話を伺わせていただきました。
きちんと整えられた工房は、薫さんのお人柄が表れているよう。
机の上に綺麗に並べられた光り輝くきれいなうつわを拝見し、思わず「うわ~、素敵!」と声が漏れてしまいました。落ち着いていて、それでいて色彩豊かなうつわ。すべて手に取ってゆっくり眺めたくなります。
「飴釉が大好きで。飴を元に瑠璃釉との間の色を少しづつ配分を変えて、作っていったんです。」とにっこり優しい口調の薫さん。
東京目黒出身の薫さんは、会社員時代に渋谷にあった陶芸教室で陶芸と出会いました。そこで、助手をしていたご主人とも出会われたことにより、より一層陶芸に打ち込むようになります。
薫さんの大好きな大正ロマン、舶来品のような雰囲気を思わせるレトロなモダンさとそれに合う釉薬の美しさを思ったとおりに融合させるのが、本当に難しいとのこと。
「主人の実家の須賀川に越してきて、陶芸教室をしながら作品作りをして。窯は灯油窯じゃないとどうしても色の深さが出ないので灯油で。でも、電気のように安定してないので窯のことは主人に助けてもらってます。」と薫さん。
特徴的な重厚感のあるおしゃれなデザインは、木の型を作り、スタンプのようにおして模様を作っていきます。
「型ではこの風合いが出にくくて。思ったように出来なくて、やっとたどり着いた感じです。」幾度もの試行錯誤の末、手作りの味わいが残るスタイルをなんとか見つけられたそうです。本当に個性があって素敵です。
2011年の東日本大震災では、須賀川もかなり揺れ、ご主人の使っている工房の中の3m近くある棚が倒れたりして大変だったようです。
「棚もちゃんと壁に固定してたのに倒れてしまいましてね。この床のヒビもすごいですよね。」とご主人。下を見ると確かに今でも痛々しい傷跡が。当時の大変さを物語っているようです。
大震災が起こる少し前に小さな地震があり、危ないなと思って窯のレバーをロックしたご主人の機転のおかげで、窯は倒れたり壊れることなく、不幸中の幸で無事だったとのこと。
「窯が大丈夫かどうかでだいぶ違いますよね。精神的にも」と薫さん。
大変な震災後の時期を経て、自分の作品に向き合う時間もできたこともあり、満を持して2015年にルリアメ工房を立ちあげます。
「まだまだ色々と試行錯誤の日々ですが、釉薬のこととか先生(御主人)に聞きながらやってます。10年、20年経つと釉(うわぐすり)の光沢も少なくなって、でもそれがまた味わい深いと思ってくれる方もいて。利用してくれてるからこそ、味が出てくるんですよね。そういううつわを作っていきたいなと思います。」と薫さん。
「この頃、彼女の作品もやっと自分のスタイルが出せてきたよね」とご主人。とってもお似合いのお二人でした。
お忙しいところお時間いただきありがとうございました。
これからも素敵な作品楽しみにしてますね!
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